いつか言おう言おうと思いながら、4年ぐらい放ったらかしにしていたことがある。
今をさかのぼること8年前の1997年2月。当時まだ26才の小僧だった私は語尾上げ撲滅の初期衝動に駆られ、ついうっかり「語尾上げ腐食列島」なるものを書き殴ってしまった。
この「語尾上げ腐食列島」は、ロックン・ロールで言えばチャック・ベリー、秘密戦隊で言えばゴレンジャーに匹敵するもはや古典とも呼ぶべき語尾上げ撲滅テキストであるが、その中に次のような記述がある。
＞現在、日本には2種類の人間がいます。語尾を上げる人間と語尾を上げない人間です。
26才の小僧にしてはなかなかの観察眼である。1997年も2005年もこの状況に大きな変化はない。だが正確に言うとこの記述は正しくない。正確には、4種類の人間がいるのである。
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4種類の人間
a.語尾上げに気付いている／語尾上げで話さない
…最少派閥。反語尾上げ連盟メンバーなどはこれに該当する。
b.語尾上げに気付いていない／語尾上げで話さない
…あまりお見かけしたことはないが存在はする。去年他界した私の祖父などはこれに該当する。
c.語尾上げに気付いている／語尾上げで話す
…確実に一定数存在する。ニュースステーションで対決した語尾上げギャル軍団などはこれに該当する。
d.語尾上げに気付いていない／語尾上げで話す
…最大派閥。もし日本が100人の村だったら99人はこれに該当する。
4種類の人間とは、上記のa,b,c,dのことである。
ここで、語尾上げで話さないaとbについては何も言うことはない。
何か言いたいのはcとdである。
cとdを比べた場合、語尾上げがひどいのは言うまでもなくcの方である。何しろおのれの語尾上げ使用を自覚しつつ、好きで語尾上げで話しているのだから、語尾上げがひどくなるのは当然である。
では、語尾上げが最もひどいcが語尾上げ撲滅の最大の障壁となっているのかと言うと、実はそうではない。語尾上げ撲滅の最大の障壁となっているのはdなのだ。今この瞬間、私は日本中のほとんど全ての人を敵に回したわけだが、日本中のほとんど全ての人は孤高のホームページ世に問う男を知らないので気にせず先へ進みたい。
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c.語尾上げに気付いている／語尾上げで話す
その前にまずcについて説明しておこう。語尾上げに気付きながら語尾上げで話すcの代表格は、ニュースステーションに登場した語尾上げギャル軍団である。
あの忌まわしき語尾上げアマゾネスの中で最もふてぶてし・・いや、最も口の達者な女性は、次のように言っていた。
＞いつものんびりしててもつまんないし？
＞友達とワーッて楽しかったらテンション上げて？っていう感じにするじゃないですかぁ。
＞喋るなっていう法律があるわけでもないし？
＞何種類かあるんですよ。
＞会話をもたせるための半疑問形？ 相手に投げ掛けるのと？
＞あと単に相槌が欲しくって？
＞いま相槌してくださいよっていうこのタイミングでくるのとぉ、
＞であと単語で上がるのとぉ、とか何種類かあるんですよ。
するじゃないですかぁ・・・って知るかっ！と言いたくなるし、法律ってお前は小学生のケンカか？！と言いたくもなるし、何度聞いても背筋が寒くなる語尾上げであるが、しかし注目してほしいのは後半の部分だ。彼女はこう言っている。何種類かあるんですよ、と。
率直に言って私は感心した。
良い悪いは別にして、ここまで語尾上げについてはっきりと認識しながら語尾上げで話すなど大したものである。自分の語尾上げをそれと知りつつ話しているということは、同時に、いつでも任意にその語尾上げをやめることが出来ることを意味するからだ。
良い悪いを別にしなければもちろんcが最悪である。だがcの場合は語尾上げを認知している分話が早い。語尾上げが好きだからやめないと言われればそれまでのことだし、むしろそこまでポリシーを持って語尾上げで話すのなら、敵ながら私は一目置くだろう。私はその姿勢そのものは嫌いではない。何よりも、cには主体性がある。主体性を持って主体性のない話し方をしているのである。
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d.語尾上げに気付いていない／語尾上げで話す
それに対して、dはどうか。
語尾上げに気付かずに語尾上げで話すdの人々（つまりほとんどの日本人）は、ほとんど語尾上げで話さない人〜ほとんど語尾上げで話す人まで幅広く分布しており、語尾上げ使用頻度の個人差は大きい。聞くに耐えない語尾上げハードユーザーの占める割合はcに比べると圧倒的に少ないだろう。
だが問題はそこではない。問題は語尾上げの使用頻度ではなく、dの人々がおのれの語尾上げにまったく気が付いていないことなのである。彼らの語尾上げはあまりにも無邪気にすぎるのだ。邪気が無いまま語尾上げで話しているから、改善のしようがない。そもそも何を改善するのかもわからない。
気付いていないのは、存在していないのと同じことである。語尾上げの存在に気付いていないdの人々にとっては、語尾上げは存在していないのと同じことなのである。語尾上げ撲滅闘争を困難にしている最大の要因はここにある。
アナキン・スカイウォーカーは自らの意志でフォースの暗黒面に墜ちた。
だがdの人々は、自らがフォースの暗黒面に取り憑かれていることを知らない。先の言い方をあてがえば、dの人々は、主体性なきままに主体性のない話し方をしているということになる。この語尾上げ最大派閥を占めるdの人々が持つ無邪気さこそが、我々反語尾上げ派がまずもって直面する大きな壁なのである。
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語尾上げ撲滅フローチャート
語尾上げ撲滅が一筋縄でいかないのは、dの人々に対して、世界には語尾上げというフォースの暗黒面が存在するのだということをまず伝えることから始めねばならないからだ。
この最初の壁を打破するために、私はよせばいいのに夏休みを利用して次のような語尾上げ撲滅フローチャートを作成した。dのような語尾上げ不感症の人に対してもこのフローチャートに基づいて行動すれば、必ずや相応の成果が上げられるだろう。私の夏休みの自由研究が皆様の今後の語尾上げ撲滅活動の一助となれば、これに勝る喜びはな・・・いやまあ他にいっぱいあるけどでもそこそこ嬉しい。
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